原子力発電と地震
大地震 ー日本は地震の巣の上にあるー
地震発生のメカニズム
何故日本には地震が多いか
地震は周期的に起こる
プレート内地震
地震と原子力発電所
参考資料

 1995年1月17日に、阪神・淡路大震災が発生し、6000人を越す死者を出して以来、それまで一般には忘れられがちだった大地震が、原子力発電所にどのような影響を与えるか大きな心配になってきました。しかし、調べた限りの教材において地震による原子力災害の危険性に触れているものはありませんでした。これで良いのでしょうか。

大地震 ー日本は地震の巣の上にあるー

 関東地方では大正時代(1922年)に起こった関東大震災が良く知られています。東京の下町を壊滅的に破壊した大地震です。一方、関西地方では戦後を始め大きな地震があったにもかかわらず、阪神・淡路大震災が起こるまでは地震が起こらないものと多くの人は思っていました。これは正確な情報がなかったことが原因であったと言われています。しかし、阪神・淡路大震災が一般的な考え方を抜本的に変えるきっかけになりました。
 世界の地震分布図によるとM4.0以上の大きな地震の分布は右の図に示されるように帯状に世界に分布しています。中でも日本は国中が地震の頻度の高い地域となり、点に埋まって国の形が見えないほどになっています。日本は地球上で最も地震が密集する場所の一つなのです。

 

 

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地震発生のメカニズム

 それではどうして地震はこのように限られた場所で起こるのでしょうか。図1の地震分布図と図2に示す世界のおもなプレートとプレート境界(変動帯)の分布を対比すると、大陸や大洋が乗っかっているプレートの境界(変動帯)に地震多発地帯が位置していることが分かります。このように地震は地球上のいたるところに起こるのではなく、限られた帯状ないし線状に起こっているのです。
 地質学的に見ると、地球表層では、何億年も昔から、地下深部に起因する運動によって、陸が海になったり、海底が隆起して山脈が出来たり、それに伴って大規模な地質構造が形成されたりする変動(「造構運動」)が続いてきたと言われています。活発な造構運動は「変動帯」という狭い帯状の地域に集中し、時代とともに移り変わってきたことが、長い地質学の研究から判って来ました。地震多発地帯は、最近数十万年とか数千万年とかの変動帯に一致しています。

map2 主な造構運動や地震火山活動が狭い変動帯だけで起こるのは、地球を覆う岩石圏全体がいくつかのブロックに分かれていて、それぞれはほとんど内部変化を起こさずに地球表面上を互いに違う向きにゆっくり動いており、それらの境界に無理な変形が集中するからです。この状況は全地球的な空間スケールと地質学的な時間スケールで見たときに明瞭で、そのような運動を統一的に説明したのが「プレートテクトニクス」という地学体系です。

 隣り合う2つのプレート同士の運動には、互いに離れていく、ぶつかりあう、すれ違う、の3種類があります。
日本列島の変動や地震発生には「ぶつかりあう」運動が深く関係しています。

 図3aに見られるように日本列島の陸のプレートに、海の太平洋プレートが沈み込んでゆきます。それに伴いプレートの境界やプレート内部の弱い面に沿って無理な変形とそれに伴う反発力が溜まり続けます。図3bのように変形が限界に達すると、陸のプレートが反発してもとに戻ろうとし、地震が発生します。1960年のチリ地震(M9.5)、1964年のアラスカ地震(M9.2)等、巨大地震の大部分はこの沈み込み境界で起こっています。

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何故日本には地震が多いか

 日本列島は図1に示すように世界有数の地震密集国です。何故でしょうか。

map3 日本列島は図4でも分かるように長い沈み込み帯を有する太平洋プレートの中間に位置し、沖合には千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝が連なっています。これらの海溝では、約4000万年も前から沈み込みが続いています。伊豆・小笠原海溝の西にはフイリッピン海プレートが、その北側にはアムールプレート、オホーツク海プレートが位置しています。このように日本列島には4つのプレートがせめぎ合っています。そのため地震活動の激しさは世界でも有数なのです。
 その地盤の上に図4に示すように原子力発電所が稼働しており、そのほとんどが地震予知のための観測地域ないしは観測強化地域内にあるかそれに隣接しています。

 

 

 

 

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地震は周期的に起こる

 地震は周期的に起こります。その例を西南日本沖合の駿河・南海トラフの巨大地震に見てみましょう(図5)。日本は図4に示すように4つのプレートがせめぎ合っていて巨大地震が多いわけですが、ほとんどの地震にフイリッピン海プレートが関与していると考えられています。これは関東地方、東海地方の下に速い速度で沈み込んでいて、そのひずみが溜まりやすく、溜まったエネルギーが解放されるからです。東海地方では1854年以降、空白時期が続いており、東海地震が近いと言われているのはそのためです。

 

 

プレート内地震

 これまで述べてきたプレート間地震の他に兵庫県南部地震(1995年、M7.2)、釧路沖地震(1993年、M7.8)のようにプレート内部に起こる地震もあります。こちらの方も直下型地震として大きな被害をもたらしますが、どのような条件で起こるかはほとんど分かっていません。

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地震と原子力発電所 ー原子力発電所の地震対策とその問題点ー

 日本の地震多発地帯と原子力発電所の位置を重ね合わせたものが図4です。これまでに見てきた地震発生のメカニズムを考えると「豆腐の上の原発」とか「ナマズの上の原発」とか言われるのが理解出来ます。地震大国といえる日本において何故このように多くの原子力発電所が建設されているのでしょうか。
 次に電力会社の言い分を聞いてみましょう。
 電力会社は原子力発電所を建設するに当たって、地震に対する備えは特に厳重に行っている、万全だと主張しています。どうしたことか国民の安全を守るべき原子力安全委員会はこれに対して文句をつけていません。原子力発電所の地震対策例を中部電力のホームページ(http://www.chuden.co.jp/torikumi/fr_atom.html)から挙げ、それをベースにその問題点を以下に示します。

○ 活断層の上にはつくらない
map4 「いろいろな調査を組み合わせて活断層のないことを確認した場所を選んでいます。」と言っています。活断層とは石橋に依れば「地形学、地質学、地球物理学的観察によって地表付近の形態が確認される断層で、最近の地質時代(最近50万年から170万年)に繰り返しずれ動いていて、将来もずれ動くことが予想されるもの」です。従ってこの上に作らないのは当然のことですが、活断層の上に作られている原発もあるのです。知られている活断層だけでも図6に示すように日本列島中に散在しています。それでは、活断層を避ければ安全か、というとそうではありません。まだ発見されていない活断層が沢山あると予想されており、どこでも地震は起こりうると考えられているからです。

○ 活断層の調査をしっかりやっています
 「いろいろな調査を組み合わせて活断層のないことを確認しています。」と言っていますが、鹿児島県と石川県で厳格な地質調査に必要なボーリングのサンプル(コア)が、原子炉を建設する敷地に捨てられていたことが、内部告発によって発覚しており、これは、実物のサンプルを他の偽のサンプルと差し替えて「安全な地層」としたことの証左であると広瀬は指摘しています。最も基本的な信頼されるべき調査の実施についても疑問があると言えます。 「いろいろな調査を組み合わせて活断層のないことを確認しています。」と言っていますが、鹿児島県と石川県で厳格な地質調査に必要なボーリングのサンプル(コア)が、原子炉を建設する敷地に捨てられていたことが、内部告発によって発覚しており、これは、実物のサンプルを他の偽のサンプルと差し替えて「安全な地層」としたことの証左であると広瀬は指摘しています。最も基本的な信頼されるべき調査の実施についても疑問があると言えます。

○ 設計震度
 「原子力発電所の特に重要な部分の設計には、過去の地震記録データや活断層によるものの他に、この周辺の地域ではこれ以上のものは起こり得ないというような大きな地震も想定し、基準地震動を作ります。」と言っています。
 原子炉の耐震性は、敷地周辺に認められた断層の長さから、想定される地震の規模を推定し、これに耐えられるように計算することになっています。発生する地震の大きさは、一般的に断層が長いほど大きくなる傾向が知られており、この関係を数学的に計算で求める手法で行われます。しかし、複数存在する断層や活断層の連続性が無視され、現実に起こりやすいエネルギー相乗効果が計算されていないため、信頼性の低いものと批判されています。
 また、1999年9月の台湾中部で発生した地震では、ダム付近で、川底を貫いて垂直方向に8mの断層運動が発生し、新しい瀧が誕生するほど巨大な岩盤の動きが見られ、このような地震が発電所の至近距離で発生すれば、揺れに対する耐震性がどれほど強固であっても、土台が消失してしまうために、一瞬で基礎が崩壊することが推測されています。

○ 建築基準法の3倍
「工学的な安全裕度を考慮して、原子力発電所の安全上重要な機器、建物などは、建築基準法の3倍の地震力を考慮して耐震設計しています。」と説明しています。
 しかし、「原子力発電所は関東大震災の3倍の地震に耐えられる」という安全論が、原発のPRで頻繁に使われてきましたが、これは誤りを通り越して、大嘘であると広瀬は指摘しています。図7に示すように日本の原発のうち最大耐震性を持つ浜岡原発3・4号機の耐震性でも神戸・淡路地震の最大加速度(833ガル)には不十分です。

○ 津波に対する対策
 発生する津波の高さに対する対策はとられていますが、津波の発生要因によっては更に大きな津波も想定されることも推察されます。また、津波が発生した後沖合まで海水が引いた場合に、原子炉が冷却不能の事態になればどうなるかなどの危険性が他にも多数あることが指摘されています。

○ 旧型の原子炉の問題点
 日本では、1966年に第1号として東海原発が運転を開始していますが、これら旧型の原子炉が設計された時代には、原子炉を設計するための耐震性の指針さえなく、プレート運動による地震の発生メカニズムも知らぬまま、電力会社が自己判断に基づいて設計していました。初期に建設された原発は、実際の地震に比較して小さな揺れにしか耐えられないものとなっています。
「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」は1981年に原子炉安全委員会によって正式決定されたものです。したがって、広瀬は1978年9月以前に工事に着手された原子炉25基は、原子炉設置基準を満たしていないという重大な事実を指摘しています。

○ 原子炉の自動停止
 原子炉は地震時に緊急停止するように設計されているとされていますが、地震によって燃料棒の間に反応を止めるために挿入する制御棒が入らなくなる可能性は充分考えられます(原子力発電の原理参照)。そうなれば原子炉は止められません。また、過去には大きな地震でなくとも緊急停止した例が見られ、自動停止機能が計画通りに上手く作動するという保証はありません。

 以上、問題点も多く、現状の原子力発電所の地震に対する安全性は信頼できるものではありません。また、関東・東海地方の地震の確率も高いことから、一度大地震が発生すれば未曾有の事態も懸念されます。
 原発事故と地震が重なったらどうなるか是非知りたい方は『原発震災』、『東京大震災の確率80%』が参考になります。

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参考資料

著書
「原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識」広瀬隆・藤田裕幸著 東京書籍 2000年
「大地動乱の時代」石橋克彦著 岩波書店 1994年  挿入図は何れもこの本からの転載です。
「阪神・淡路大震災の教訓」石橋克彦著 岩波書店 1997年
「原発震災」明石昇二郎編 七つ森書館 2001年
「原子力市民年鑑」原子力資料情報室編 七つ森書館 2003年
「平成14年版 原子力安全白書」原子力安全委員会 国立印刷局 2003年
「あなたはどう考えますか?〜日本のエネルギー政策〜電源立地県福島からの問いかけ」福島県エネルギー政策検討 会福島県企画調整部エネルギーグループ 2002年
「東京大震災の確率80%」石黒耀著 文芸春秋 2004年

ホームページ
ストップ浜岡 東海地震が起きる前に http://www.stop-hamaoka.com/
浜岡原発止めよう裁判の会 http://www.geocities.jp/ear_tn/
株式会社中部電力ホームページ 原子力情報ライブラリー原子力発電所の地震対策 2004
日本原子力産業会議ホームページ 2004 
経済産業省 原子力のページ 2004 
原子力安全・保安院ホームページ 2004
日本エネルギー経済研究所ホームページ 2004

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