JCOB


   東海村JCO臨界事故(3)


■なぜ、事故が起きたのか?

Q: なぜこんな恐ろしい事故がおきたの?

A: 直接の原因は臨界りんかいをふぜぐ特別の管理をしていない沈殿槽ちんでんそうというタンクに,濃いこいウラン溶液を限度を超えてたくさん入れてしまったことなの。

Q: なぜそんなまちがえをしてしまったの?

A: およそ4つのことが考えられるわ。

@、 まず根本的な原因は、この種の施設では、人間が取り扱い上ミスをしても絶対に臨界を起こさない設計をするように決められているのに、それができていなかったこと。

A、 また、国も安全審査あんぜんしんさをするときに、1の施設の欠陥けっかんを見過ごして審査を通してしまったこと。

B、 それに、作業をしていた3人は、臨界の恐ろしさも,濃いウラン溶液が危険だということも教えられていなかったの。JCOは臨界の危険性を教えておくべきだったわ。

C、 もうひとつ忘れてならないのは、「核燃料サイクル開発機構かいはつきこう」の注文そのものが無理で、この施設にあわず、作業をむずかしくし、危険なことをしてしまったことね。

Q: これからどうしたらよいの?

A: 原子力は、原発でも原爆でもその基本は同じで、非常に恐ろしい被害を出すことはわかるわね。でもいわゆる原発ではないところでこういう事故が起こることは国も自治体も、ぜんぜん考えていなかったの。今までの安全神話がこわされたわけ。

 だからまず、原子力について正しい知識を持つことが必要で、事故はあり得ないではなく、万が一に備えることが大切ね。政府や電力会社は、何より安全を第一に考えてほしいし、正しい情報を市民に広めてほしい。
そして、万が一にそなえてヨウ素剤ようそざいを配布するなど防災対策をしっかりしてほしいわね。 

 最後に亡くなった方を解剖かいぼうしたお医者さんの言葉をきいてください。

「もうひとつOさんがうったえていたような気がしたことがあります。それは、放射線が目に見えない,匂いもない,普段多くの人が危険だとは実感していないということです。そういうもののために、自分はこんなになっちゃったよ、なんでこんなに変わらなければならないの、若いのになぜ死んでいかなければならないの、みんなに考えてほしいよ。心臓をみながら、Oさんがそう訴えているとしか思えませんでした。」 
   (NHK取材班「東海村臨界事故、被曝治療83日間の記録」より)



参考資料

文献
1. ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告(案) 原子力安全委員会ウラン加工工場臨界事故調査委員会  1999年
2. 「JCO臨界事故と日本の原子力行政」=安全政策への提言= JCO臨界事故総合評価会議 七つ森書館 2000年
3. 「原発事故はなぜくりかえすのか」 高木仁三郎著 岩波新書2000年
4. 「人間の顔をした科学」 高木仁三郎著 七つ森書館 2001年
5. 「恐怖の臨界事故」  原子力資料情報室編  岩波ブックレット 1999年
6. 「東海村『臨界』事故」  槌田敦十JCO臨界事故調査市民の会 高文研 2003年
7. 「東海村臨界事故被曝治療83日間の記録」 NHK取材班 岩波書店 2002年
8. 「漠さんの原発なんかいらいない」 西尾漠著 七つ森書館 1999年
9. 「あの日、東海村でなにが起こったのかールポ・JCO臨界事故」 粟野仁雄 七つ森書館 2001年
10. 「検証東海村臨界事故,眠らない街」 相沢一正 丹野清秋編/著 実践社 2000年
11. 「原子力の終焉と臨界事故」 小泉好延 たんぽぽ舎 2001年
12. 「原子力資料情報室通信 353号」 原子力資料情報室 原子力資料情報室 2003年
13. ビデオ「被曝治療83日間の記録」 NHK取材班 NHK 2001年
14. ビデオ「東海村臨界事故への道」 NHK取材班 NHK 2003年
15. JCO臨界事故患者の初期治療 鈴木 元 保健物理 35, 4-11 2000年



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