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 予防原則とは、「主に環境問題について、もしそれが原因なら重大な被害が予想できる場合、科学的な因果関係が明らかになっていなくても予防対策を講じよう」という考え方で、環境問題を考える上で重要な考え方です。

 放射線の場合、発がんだけではなく、様々な病気を引き起こすことがわかっているので、予防原則から「なるべく浴びる量を減らす、余計な被曝を避ける」ことが大切です。

 ですから、ICRP(国際放射線防護委員会)は「ALARAの原則」=「As Low As Reasonably Achievable」 という原則を提唱しています。直訳すると「合理的に達成できる限り被ばく量を低く抑えよう」という考え方です。

 実際には、被ばく量を極端に低く抑えるにはお金がかかってしょうがないので、この「合理的に達成できる限り」の部分を「経済的に無理のない範囲で」と解釈するのが主流の考え方です。しかし、一般市民、特に将来を担う子どもたちを被曝から守るためには、「経済的に無理のない範囲で」と解釈することは妥当ではありません。

 例えば、避難指示解除の基準「年間20ミリシーベルト」は、一般市民の被曝限度「年間1ミリシーベルト」と比べて高すぎます。一般の日本人には「年間1ミリシーベルト」が適用されて、なぜ福島県の汚染地域の人々が「年間20ミリシーベルト」を我慢しなければならないのでしょうか。これは明らかに予防原則に反しています。

 そして、この副読本は「少しくらいの被曝は怖くないよ」というメッセージを伝えることによって、避けられる被曝を「避けなくても大丈夫」と感じさせる効果を与えています。

 予防原則から考えれば、やるべきことはこの逆ではないでしょうか。「なるべく浴びる量を減らす、余計な被爆を避ける」考え方を伝え、そのための能力を育むことが学校教育でおこなうべきことでしょう。


        
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