p.1-9  H:放射性物質が日本に大きな被害を与えました ↑前のページへもどる

 「東京電力株式会社の福島第一原子力発電所で事故が起こり、この事故により放出された放射性物質は、日本に大きな被害を与えました。」と書かれています。
 何か他人事のような、あるいは「事故」は自然災害であるかのような記述です。福島第一原子力発電所の事故は人災です。国会事故調査委員会報告書などにもあるように、この「事故」は人災です。そして、国の責任も問われています。それにもかかわらず、この副読本の記述はどこかよそよそしい他人事であるかのように装った記述です。
 2014年に発行された前回の放射線副読本には、次のような記述がありました。「福島第一原子力発電所からの距離の遠い・近いにかかわらず、ともに社会に生きる一員として、一人一人が事故を他人事とせず、真摯に向き合って、今後どのように対応し、課題を克服していくべきかを考えるきっかけとなることを願っています。」この記述には、事故について著作者が真剣に向き合い、そこから呼びかけている姿勢をわずかながら感じることができます。しかし、今回の副読本でこどもたちに向き合うように呼びかけているのは、このページのGのコメントで扱ったように、有用な放射線の利用方法について向き合うことを呼びかけています。原発事故のことにはここでしかふれていませんし、前回の副読本には掲載されていた、事故を起こした福島原発の写真は削除されています。
 この放射線副読本には、事故を起こしてしまったことへの当事者としての振り返りや反省の言葉が一言も出てきていません。文科省は経産省とともに原子力開発において中心的な役割を担ってきました。自分たちの立場を棚に上げて、こどもたちに「真摯に向き合う」ことを説いても、そのことばは空疎に響くだけです。
写真は2014年版 放射線副読本より

        
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