p.8-1   地域の復興・再生
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■地域の復興・再生        クリックすると拡大します→
 まず、今福島から避難されている人がどれくらいの数なのか、認識することからはじめましょう。2014年1月の時点で、避難指示区域からは約8万人、福島県全体では"自主避難"も入れて13万7000人の方が避難をしています。
 このような現状から、これからの福島をどのように"復興"していくか、現実的な議論が求められています。放射能の影響を過小評価せず、住民が帰還するかしないか、住民自身がフリーハンドで選択できる、そうした環境を整えた上で、住民も参加して"復興"のビジョンを組み立てていく、そうしたプロセスが必要なはずです。誰のための、何を目指しての"復興"なのか、よくわからないところがあります。
 (フリーハンドというのは、帰還を選ばない人には、それなりの生活再建の保障をすることを含みます。)
 避難指示解除準備区域の中で、2014年4月に避難指示が解除された田村市では、5月23日の時点で帰還者は住民票登録者の約51%。都路町の内福島原発から20km圏内では帰還者は23.1%とのことでした。(福島民報2014.6.6.)
 どれだけの住民が戻ってくるのか、予想が難しい中"復興"計画だけが進行しています。

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このグラフは、自治総研が朝日新聞と共同で2011年6月から2013年11月まで4次に渡って原発事故避難者を追跡し、面接調査により作成したものです。月日がたつにつれ、帰還の意思を持つ人が減っています。 今後さらに帰還をあきらめていく人が増えるのは容易に想像できます。



 同じ調査で、避難者に住まいについて今後の意向を尋ねたの結果がこのグラフ。元の住まいに帰還することを考えている方は4分の1です。
 避難が解除されている南相馬市では、年少児を持つ若い世代を中心に未だに未帰還者?が多く、急速な高齢化が進んでいる。

 福島県による 福島復興ビジョンが策定されています。事故により突然故郷を奪われ、避難を余儀なくされた福島の人々の心情を察するに余りあります。なんとしても福島を再生させたいという気持ちがあふれたビジョンだと思います。
 ですが、福島から避難している方たちの過半数は、戻ることはないのではないでしょうか。
 こうした現実的な予想をもとに、"復興"を考えていく必要があると思われます。

■"復旧"ではなく"復興"
 今、国が復興プランの目玉として考えていることは、新しい産業や施設を福島に誘致することのようです。

新たな産業の創出等に寄与する取組の重点的な推進
・「重点推進計画」(県が作成し国が認定)
基本方針に即して、再生可能エネルギー源の利用、医薬品及び医療機器に関する研究開発を行う拠点の整備を通じた新たな産業の創出及び産業の国際競争力の強化に寄与する取組その他先導的な施策への取組の重点的な推進に関する計画
計画事項:計画の区域、目標、期間、目標達成のための取組内容
・(独)中小企業基盤整備機構が管理する工場用地の無償譲渡、研究開発の推進(先端的研究開発推進、成果の活用等支援) 、企業立地の促進(立地促進、人材育成・確保等支援)など


 福島を事故以前の状態に戻すには、何十年もかかると思われます。それを補うために新しい産業や研究開発施設を誘致して"復興"させようとしています。"復旧"よりは見通しが明るいからでしょうか。ここでも産業界寄りといわれる安倍政権の経済政策アベノミクスの影が見えているような気がします。

 とにもかくにも福島に人を呼び込んで、福島の"復興"を国際的にアピールする、原子力政策を推進する一方で、福島のマイナスイメージをすこしでも打ち消そうという現在の政権の姿勢、そんな側面をもっているといえます。

■福島の"復興・復旧" きみだったらどうする?
 福島の"復興・復旧"は、放射線のリスク低減と同じくらいの年月をかけて取り組む必要があります。これからの福島は若い君たちのものです。
 どんなプランがあるか、君たちも考えてみましょう。

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