p.7-3   除染の取組
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■除染、国と県・市町村、東京電力の役割
 副読本には除染が支障もなく進んでいるように書かれているが、実際には上手くいっていない。
 最終的に除染の費用負担は東京電力がすることになっている。国(環境省)が東電に配慮して?除染方法を厳しく制約しているために、実際の作業が行われなかったり 【注】、 作業員が確保できなかったり、また、除染の結果発生する"放射性廃棄物の中間貯蔵"のための場所が確保できなかったりといった理由で、国が用意した予算が、市町村の担当部分で6割(2013年7月12日朝日新聞)、国の直轄部分で8割(2013年10月16日朝日新聞)が未消化だという。当然除染作業は計画から大幅に遅れている。
 さらに、終了した除染にかかった費用(2013年.10月現在で404億円)を国が東電に請求しているが、除染の基準が不明確だから等々という理由で、東電が支払いに応じたのは16.7%だけであるという。
 【注】:"国(環境省)が東電に配慮して?除染方法を厳しく制約"というのは、東電が除染基準や方法をめぐって注文をつけて支払いを渋ってくるので、それを配慮して基準や手法を厳格に適用しているという意味だそうである。
 除染費用は2014年3月までで約1兆9000億円が計上されている。今後の見通しとして将来的に総額5兆円をこえるという試算もある。(産業技術総合研究所2013年7月) ただしこれだけでは、除染によって生じる放射性廃棄物を"中間貯蔵"するまでで、"最終処分"についてはなんの見通しもない。

■もうけるゼネコン・大手、搾取される労働者
 このような"公共事業"は、除染作業の元請けにあたるゼネコンや大手建設業者にとっては、ボロ儲けのできるおいしい仕事だそうだ。
 作業自体は極めて単純な作業で、誰でもできる。左写真は2013年8月にいわき市郊外久ノ浜の民家の除染作業の現場で撮ったものだ。一軒の除染に、20人以上の人手で人海戦術。庭の土を5cmほどの厚さではがしていく。狭い場所だから土木機械は使えない。屋根の瓦は、布で拭き取る。ただし その布は、同じところで往復させてはならない。放射性物質をなすりつけないように、一方向だけ拭くと、布を裏返す。同じ面では二度と拭かない。 そういう作業の繰り返し。しかし、雨が降ったり、風が吹いたりすると、線量は元に戻ってしまうことがあるとも聞く。
 こうした作業をするために、日本全国から働く人たちが福島に集まっている。写真上は福島県楢葉町の除染作業員のプレハブ宿舎だが、駐車場に止めてある車は、熊本・鹿児島・宮崎など、九州方面の車が多かった(2014年3月)。これから東京オリンピック準備で東京方面に人手がとられてしまうと、除染作業員が不足する心配がある。
 福島の地元で聞いたところによると、今、福島で除染作業に関わっている人たちは、日本各地の原発で働いていた人たちで、各地の原発が動いていないので(2014.12現在)仕事を求めて福島で働いているとか。

 ここで働く人達は、多くて七重・八重の下請け構造の中で働いていて、給料がピンハネされているという。国直轄除染は、原発に比較的近いところなど、線量の高いところを中心に行われているが、危険手当として"除染手当"の名目で一人一日1万円が国から支給されている。しかし、身の危険を冒して働いているにもかかわらず、下請け構造の中で、賃金本体が「中抜き(ピンハネ)」されていて、手取りは手当の付かないところと大差ないまでになっているという。当然、何十にも重なった会社はピンハネで儲けていて、まさに"濡れ手で粟"の商売である。


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