生徒用p.13-1   長袖の服を着たりマスクをしたり・・・
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 原子力施設で事故が起こったら「長袖の服を着たりマスクをしたりすることにより、(放射性物質が)体に付いたり吸い込んだりすることを防ぐことができます。」・・・確かにその通りです。
 右図は1986年のチェルノブイリ原発事故の後に神奈川の高校の先生たちが出版した「原子力読本U(1989)」という教材のために、当時の高校生が描いてくれた"原発事故避難ウェア"です。福島原発事故で多用されているタイベックがあればそれを着るのが一番ですが、それがないときには図のようなレインコートで代用しましょう。

 その他に右図の放射線副読本の記載の改良点をあげてみます。
@:今回の事故の教訓では、地震や津波も同時に起こったために、至る所にがれきが散乱しました。そんなところでは、靴は長靴の方がよいと思います。
A:衣服の素材に関して、p.5-2 で述べたように、放射性物質が付着した衣服は、そう簡単に放射性物質を取り去ることができないということです。ですから、新放射線副読本の挿絵も、普段通りの服装ではなく、上記のレインコートのような服装の方がふさわしいと思われます。
 また、レインコートは雨にぬれないようにするためにも、役に立ちます。原子力施設の事故では、放出された放射性物質は雨や雪にまじって地面に落とされますから、雨雪を体に触れさせないようにしましょう。
B:レインコートには頭にかぶる部分が付いていますが、帽子をかぶっていた方が安心です。
C:屋外で活動するときには、地面に直接すわらないようにしましょう。

【以下 p.5-2 再掲載】



 いわれのない偏見や差別、風評、いじめ、などこまった問題ですが、「万一、放射性物質が身体や衣服の表面に付着したとしても、シャワーや洗濯で洗い流すことができます。」というのはあまりに放射能を軽く見た表現です。
 汚染地の住民による実体験に基づいたレポート( 2013.1.20.南相馬市安心安全プロジェクト吉田邦博氏)では、1年以上着続けたTシャツなどは、セシウム汚染は洗濯しても下がっていません。
 また、ナイロン製の表面がツルツルした素材の衣類(ジャージ)では、室内に入るときに服の埃を払うとよいとされていましたが、実際にはセシウムの付着は払い落とせないことが報告されています。



 同じレポートには、南相馬市の理髪店で採集した市民の頭髪を集めて測定したところ、130.37Bq/kgのセシウムが検出されたそうです。(2012.10.11.)採集した頭髪をシャンプーで除染を試みたところ、シャンプーでは落ちず、食器用洗剤が有効であったことも報告されています。
 衣服・頭髪に放射性物質が付着すれば、人体に至近距離で放射線を出すわけですから、内部被ばくに準じた影響を受けると考えるべきです。

 放射性物質は、非常に微細な粉塵として空気中を漂っています。何かに付着したときに簡単に落とすことができるとは考えられません。
 例えば、汚染された自動車の除染は極めて難しいといわれています。自動車内部の配管(ラジエーターなど)やフィルター、入り組んだ構造の細かいところまで、放射性物質が入り込んでいるためです。
 兵庫県の郷地秀夫医師【注】は、外気を吸い込みゴミを濾過する自動車エンジンのエアフィルターに目をつけています。事故直後の2011年3月14日に坂総合病院に支援に行った兵庫民医連の車のフィルターを検査すると、3万ベクレルの放射能が認められたそうです。この車は福島の支援ではなく宮城に行くために、原発から60km離れた高速道路を通過しただけだそうです。各地の車のフィルターを集めれば、人間が吸い込んだかもしれない空中の放射性物質による内部被ばくの証拠になるとして、フィルターの収集を呼びかけています。 注:東神戸診療所 郷地秀夫医師 兵庫県内で約35年間、原爆被爆者の治療を続け、福島などから避難している被災者の診断や健康相談にも当たっている。

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