DNA と 放射線による損傷 A ↑前のページへもどる

■放射線とDNA
 放射線がDNAにあたるとどうなるでしょうか。放射線の持つエネルギーは、DNAの化学結合のエネルギーよりもはるかに強力なので、放射線があたるとDNAのくさりは切断されます。
DNAの化学結合のエネルギーは5〜7eV、
診断用エックス線でさえ、エネルギーは100,000eV

   DNAの二重らせんのうち、一本のくさりだけを放射線が切断したときには、切断されていない方に、塩基配列が残っていますから、ほとんど完全にDNAは修復されます。 (一本鎖切断)
 しかし、二重らせんのくさりが二本とも切断されると(二本鎖切断)、DNAの修復はうまくいかないことがあります。まちがった部分とつながってしまったり、別のかけらが紛れ込んだり、修復ミスがおこりやすいのです。
 この修理ミスを変異と呼んでいます。変異がひどいと細胞は分裂・増殖に失敗して、死んでしまいます。これを細胞死(アポトーシス)といいますが、細胞が死なずにDNAの変異が固定化して生き延びてしまうと、これが将来のガンなどの引き金になっていくと考えられています。
 こうしたDNA切断は、細胞内に発生した活性酸素によってもおこり、その修復も日常的に行われているようですが、放射線による被ばくは、DNA損傷率を高め、修復機能の負担を増加させ、変異を引き起こしやすくします。
 こうして、DNAの変異が固定化すると、その変異は細胞分裂・増殖をしても引き継がれていきます。DNAの変異をなおす治療法・治療薬は現在のところ存在しません。そして、さらに被ばくが続けばそうした変異は積み重なっていきます。こうした変異が一定レベルに達するとガンなどの症状として表れてきます。

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