福島原発事故と労働者の放射線被ばく ↑前のページへもどる

■■収束作業は始まったばかり・・・・なのに■■
 2012年3月11日に起こった東京電力福島第一原子力発電所、この事故に対処するため、膨大な数の作業者が毎日現地で働いています。避けることのできない放射能に身をさらしながら、まさに命がけの作業が果てしなく続いています。
 その人数は1日に2,000人〜3,000人といわれています。
 2011年12月に事故の収束も今後の見通しもつかない中、突然に野田政権は事故の収束宣言を出しました。原子炉には近寄ることすらできず、手がつけられない状態のまま、高線量のもとでの多くの作業員が毎日働いています。今後数十年、あるは数百年に及ぶ廃炉作業が必要です。それほど長い期間にわたって作業者が確保できるのかが危惧されています。

 東京電力はこれまで、福島原発を廃炉にする作業に向けて約24,300人の登録があると発表していましたが、実際には8,000人しか確保できていないということを明らかにしました(2012年11月福島民友)。野田内閣による事故の収束宣言の後に危険手当がカットされたことにより、被ばくによる危険な作業にもかかわらず報酬が少な過ぎることが今後の人員確保をさらに厳しくしています。
 作業者の被ばくに関しては、電力会社社員に比べ、請負会社などの社外の作業員の放射線被ばくが平均の4倍の線量にのぼることもわかりました。全体の9割近くが社外の作業員であるため、総被ばく線量では約30倍になります。より危険な業務に下請け作業員を当たらせているという実態が次々に明らかになってきています。

▼▲リンク(別ウィンドウ)▲▼
●東京電力HP上の、福島原発事故直後の写真集2011.3.15〜4.11

●時事通信社 福島原発写真特集(1)〜(7)


■■福島第一原発とほかの原発との比較■■
 福島第一原子力発電所内では、作業者は1日に約3ミリシーベルトもの線量のもとで苛酷な労働に従事しています。
 2003年に、原発での作業で1年間に20ミリシーベルト以上被曝した作業者は、個人の年間被ばく線量の統計が公表されるようになりました。それ以来2009年度までの7年間で20ミリシーベルト以上だったのは21名でした。
 しかし、福島事故では事故の後1年間だけで4398名の作業者が20ミリシーベルトを超える被ばくをしています。さらに、100ミリシーベルト(外部、内部被ばく線量の合計)を超えた人は(2011年3月11日〜2012年7月31日)167人にのぼると発表されています。
 白血病の被曝線量に関する労災認定基準は1年あたり5ミリシーベルトで、この線量に達した人は少なくとも9,800人を超えているとのことです。(福島原発の地元の双葉郡で40年以上に渡って原発作業員の支援をしてきた石丸小四郎さんによる。NHK:ETV特集「ルポ 原発作業員〜福島原発事故・2年目の夏」より 2012年8月19日放送 )
  http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11334007570.htmlに放送スクリプト

 しかも、ずさんな線量管理が行なわれていたことから、本来カウントすべき線量がもれていた人がたくさんいることは明らかになっています。線量のカウント漏れについては、雇用者側が隠す場合のほか、雇用される側が線量を隠すことも行なわれています。それは、年間50ミリシーベルトに達すると解雇されてしまうために線量計を隠したり被ばく線量を低く申告したりするケースです。
 厚生労働省は、事故直後の2011年3月15日に省令を改正し、一時的に作業者の被ばく限度を年間50ミリシーベルトから250ミリシーベルト(実行線量)と高めていました。しかし2011年11月1日、この日以降に働き始めた作業者については原則として5年で100ミリシーベルトに引き下げました。
 ただし、高線量区域で原子炉の設備のトラブルに対応する労働者とすでに緊急作業に従事している労働者に対しては、被曝上限を変更せず 250ミリシーベルトのままにしています。また、原子炉施設の冷却維持などの作業に欠くことのできない高度な専門知識をもつ東京電力社員約50名についても、 2012年4月30日までの間、被曝限度を250ミリシーベルトとしていました。

■■作業者の外部被ばくと内部被ばく(東電発表)■■
 一方、内部被ばくの評価がどのように行われているのかは不明のままです。東電社員で高線量被ばくした人については丁寧な精密検査測定評価が行なわれましたが、協力会社や下請け会社の作業員からは十分な評価がされていないという不安や不満の声があがっています。東電が毎月末に発表しているデータでも、作業者の内部被ばく線量の分布が月別に示されているのは2011年10月までです。事故発生時、地震と津波で福島原発内のホールボディーカウンター(WBC:内部被ばく測定器)が使えなくなり、しばらくは作業者の内部被ばくは測定できないままの状態でした。その後、ホールボディーカウンターが復活してから月ごとに行なわれていた内部被ばく測定が、昨年2012年12月の「事故収束宣言」以降、3ヵ月ごとになりました。
 また、東電では内部被ばくについて2ミリシーベルトが「記録レベル」とされています。(2ミリシーベルト以下は記録しなくてもよいという認識なのかを東電と厚労省に問わなくてはなりません。)

■■関連会社、暴力団■■
 福島第一原発には、東京電力を頂点に、およそ350社もの会社が関わっています。プラントメーカー、それらの子会社、大手・中堅会社、小工事会社、ひとり親方など、ピラミッド型の多重構造になっています。(資料1)
 雇用形態・条件・内容は下に行くほど不安定となり、末端で働く者は日給5000円で社会保険や雇用保険も加入できないなどの違法行為も横行しているという訴えもあります。
 また、原発には暴力団が深くかかわっているといわれています。
 東京電力という公益企業が暴力団を活用し相互に依存しているのです。原発という危険で厳しい労働の現場は暴力団組織に依存することによって存続できたともいえます。

 原発で長年働いてきた佐藤信弘さん(故人)は次のように語っています。
 「原発の3Kの実態が、暴力団が存在感を増す下地になっている。命令と服従の関係が仕事をこなすときに力を発揮する。放射線管理区域に入るとき防護服に着替えるが、入れ墨で幅を効かせる。労働トラブルを力で押さえられる」。
 さらに、佐藤さんは「原発では労災隠しが常態化し、急病人が出ても救急車を呼ばず、3時間も放置され、同僚の車で病院に搬送された。私の経験では、原発内の労働災害は90パーセントまでが隠されている」と証言しています。

■■被ばく手帳の交付を■■
 福島事故被ばく労働者に、健康管理のための「手帳」の交付が必要です。
 厚生労働省は、50ミリシーベルト以上の被ばくをした作業者に「特定緊急作業従事者等被ばく線等記録手帳」(以下「手帳」)を交付し、離職後も健康診断を行なうとしています。50ミリシーベルト以上の被ばくをした作業者だけではなく、福島事故被ばく労働者すべての健康管理が必要です。
 つまり、原発構内作業者だけでなく、除染作業や警備などさまざまな仕事に従事しているすべての作業者を対象としなければならなりません。

■■福島原発作業者の年齢■■
 東電が公表したデータによると、事故対応で被ばくした作業員は2万人。  40代が最も多く5,893人で、平均被ばく量は11.64ミリシーベルト。平均被ばく量が最も大きいのは20代で15.86ミリシーベルトでした。なお、作業者の年齢は下は10代から最高齢は84歳までで、10代の作業者のうち、最大被ばく線量は累積で56.89ミリシーベルトでした。
 18〜19歳は64人で、平均被ばく量は8.26ミリシーベルト。最大の56ミリシーベルト超は東電社員で、協力企業の最大値は44.34ミリシーベルトでした。一方70代の以上の作業員は26人。(東電発表2012年12月6日)[時事通信社]


▲▼ 参考URL▼▲
●被ばく労働を考えるネットワーク
http://www.hibakurodo.net/index.php?page_id=66

●被ばく労働に於ける法令違反根絶等対政府申し入れ
       原子力資料情報室・原水禁日本国民会議他  2013.2.7.
http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2013/02/7bc27a7d5ce58f54e870212c14892bbb.pdf

●福島第一原発収束作業員のKさんの訴え
http://nitran.blog22.fc2.com/blog-entry-354.html
 



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